初めての同人誌を作るまで

昨年の夏前に書いた下書きが放置されていたので今頃アップします。

 

私の腐女子歴は中学生のときから始まり、だいたい15年ほどです。当時からずっと小説を書くオタクで、地方在住のため同人イベントに参加することなく大人になり、二次創作の環境は今までずっとインターネット。
個人サイトの時代から始まり、ツイッターピクシブが主流になり、作品の共有はとても簡単になりましたね。本当にありがたいです。

 

2017年、生まれて初めて同人誌即売会に参加することになりました。同ジャンル別カプの友人がサークル参加するというので同行させてもらい、サークルチケットで入場し、設営の手伝いと売り子をする。売り子の合間に自カプの本を買う。今まで同人誌というものは書店委託のものを買うのが当たり前だった私にとって、イベントで本を買う、作者本人から直接手渡してもらう、というのはあまりにも感動的な体験でした。ツイッターで何度もやりとりをしている相互フォロワーさんの本を買うときですら緊張で名乗ることもできませんでした。
友人はもう何度もサークル参加をしているため、スペースには何冊もきちんとした装丁の立派な本が並んでいて、楽しそうだなあとは思ったものの「私もやろう」とは一切なりませんでした。あまりにもハードルが高いと思ったからです。しかしお隣のサークルさんはコピー本を一種類置いただけの簡素なレイアウトで、いろいろお話をさせてもらい、こういう参加もありだということを提示してもらいました。「今朝地元のセブンで刷ってきたんですよ」と言いながら中綴じ用のホッチキスを見せてくれました。そんなものが存在することすら知らなかった私にとって、それは魔法のようなアイテムでした。
隣のサークルが身軽な荷物を持って早めに撤収するのを見送りながら、私は友人に「私もやろうかなあ」と言いました。


以下、初めてのサークル参加に向けて行ったことの備忘録。

10月
参加するイベントはいつでも良かったけれど、目標を決めないと絶対に書かないと思ったので、期間的に余裕を持ちつつジャンルオンリーのある5月のスパコミに設定。サークル名は「サークル名ジェネレータ」にお任せして、サークルカットは苦労しながらもそれらしいものを作りました。あとから電子カタログを見たら、小説サークルはシンプルにサークル名だけ、みたいなのも多かったです。これでよかったのか……
書きたい話を脳内でざっくり考えながらプロットを作っていきます。

11月
ぼちぼち本文を作成しながら、同時進行で印刷所も探していきます。参加するのが5月のスパコミでずいぶん先なので一番早割が安いところにしようと思いながら、候補の印刷所に紙のサンプルを発注。紙のことなんて何も知らなかったので、ひたすら触りながら手触りのいい紙を探しました。

12月
年内に書き終わりたかったけど諦めました。正月休みに頑張ろう。表紙を作らないとなのでタイトルも考えていきます。デザインセンスは皆無なので写真素材に頼りたくて、そのためにモチーフが分かりやすいようなタイトルの候補をいくつかピックアップ。例えばヒマワリとか青空とかそういうの。

1月
一太郎2018を購入。もともとOfficeの入っていないPCを使用していたため、本文のレイアウトを作成してPDFで出力できるソフトを探していました。2017年版のときに「同人作家狙い撃ち」と話題になっていたのを知っていたので調べてみたところ、本文に使えそうなフォントも入っていたので導入することに。今思えば本当に買ってよかったです。
このあたりからようやく執筆速度がスピードアップ。

2月
タイトルと表紙のイメージが固まったので表紙用の写真素材を探す。商用利用可、加工可、高画質の無料写真サイトから素材をお借りしました。ようやくざっくり本文が完成し、友人に校正を依頼。2冊作れたらいいなあと思っていたのに多分1冊で終わりそう。月末にジャンルオンリーがあったので一般参加……と思いきや、サークル参加のフォロワーさんに声をかけてもらって売り子参加することに。ビッグサイトはあまり行ったことが無かったので助かりまくりです。スパコミでも使おうと思ってここで小さめのキャリーバッグを購入。サークル参加者の荷物や机の上のレイアウトを観察しながら用意しなければならないものを検討しました。

3月
早割の締切が月末だったので慌てて本文を完成させました。表紙を2日で作成しなければならなくなり慌てる。背幅?タチキリ?なにそれ?みたいな状況だったのでとにかく印刷所のテンプレートを落としてきて、昔買ったペンタブについていた古いフォトショに流し込み、写真素材を合わせていく。それらしく文字を入れて完成!
本文のレイアウトも何が何やらという感じでしたが、一太郎のおかげでどうにか完成。締切前日の夜23時ごろに入稿が完了しました。後々になって「入稿が簡単」という印刷所のレビューを見つけて、ここの印刷所じゃなければ間に合ってなかったかもなあと戦慄しました。

4月
サークル参加しようと思ったあの日、隣のコピー本サークルさんに見せてもらったあのホッチキスがどうしても使いたい!印刷もセブンで簡単にできるとネットで読んだし、コピー本も作っちゃおうと決意。頭の悪いアホエロで表紙込み16ページのコピー本を作成しました。いろいろあって印刷と製本はスパコミ前日に。あとは机に敷く布と例のホッチキスを購入しました。
ピクシブに本文サンプルとおしながきを掲載。小説機能しか使っていなかった私のピクシブに初めて「イラスト」が投稿される。部数はブクマをもとに計算とかなんとかネットでは見たけれど、本文サンプルのブクマは1桁でした。え、詰みじゃんwwww一抹の不安がよぎる。

5月
自ジャンルはスパコミ2日目だったので、前日から東京に移動。当日手伝ってくれる友人と一緒にセブンイレブンに行ってコピー本を出力し、宿で一緒に製本作業をしました。あのホッチキス、すごく難しい。折り目にきちんと合わせてるつもりなのに力を入れるとすぐにズレる。友人の方が上手だったので途中から私は折る係になりました。憧れのホッチキスが……
イベント当日はサークル入場の時間にちょうど駅に到着。追加椅子を借りに行ってから自分のスペースに向かうと机の下にダンボール箱。あっこれ売り子に行ったときに見たぞ!ウキウキで開封すると、サンプルで触りまくってた紙の手触りに自分が貼り付けた写真素材。えっすごい本当に本になってる!と大興奮。特殊紙だからますますそれらしくなってました。
布を敷いて、釣り銭を用意して、印刷所の本とコピー本を並べる。写真を撮って「設営完了」とツイート。まるでサークル参加者みたいだ!すごい!とまた興奮。

 


本の発注時、部数は非常に悩ましかったです。ピクシブのブクマ数から算出、とネットの記事では見たけれど、早割で入稿したかったのでブクマが付くのを悠長に待っている暇はなかったし、ツイッターのフォロワーだって50人も居ない。できればキャリーバッグに詰めて手搬出したいし、狭い家なので在庫もできれば持ちたくない。(必要があれば次回イベント時には再販すればいいじゃんと思ったり)
結局「これぐらいなら丸々余っても持ち帰れる」と判断した部数を発注。丸々余ったときのことを考えて当日の買い物は控えめにしました。
頒布価格については、ネットで調べたら「ページ数×100円」とか「小説はさらに×0.8」とか書かれていました。儲けようとは思っていないものの、今後の活動のことを考えるとバックは多いほうが助かる。相場からも外れたくない。とはいえ自分が買い手だったとして、たった40ページ弱の文字通り薄い本(しかも名前も知らない新規参入の作者の本)を買うとなると……ということで若干安め(※相場からは外れていない)に。

本は半分ほど捌けました。最初は「5冊ぐらい売れたら拍手でしょ」と思っていたので祝杯レベルです。5冊というのは「買うよ!」と言ってくれた顔見知りのフォロワーの数だったはず。
ちなみにコピー本は完売でした。最初は無配にしようかと思ったけれど、無配だけ貰いに行くのって躊躇するよなー(私は絶対にできない)と思ったので100円に。100円のアホエロ本は間違いなく手に取りやすい。コピー本のついでに新刊を買ってくれた雰囲気の人もいたので、この作戦は今後のイベントでも導入しようと思いました。
次回のイベントにも持っていきたい本が半分売れたのは非常にちょうどいいです。余りすぎても持って帰るのが面倒だし。
(※追記→2回目は大阪だったのであまり動かず、3回目の東京のイベントで完売しました)


イベント参加に踏み切れなかったいくつかの理由とその結果
・長文を書けないから本にできない。小説なら少なくとも4万字ぐらいは書かなきゃダメでしょ?
 →結局2万字しか書けなかったけど本になった。書店勢だったから知らなかったけど、イベントに行くと思ったよりペラ本も多い。
・本にするってめっちゃお金かかりそう。
 →早割のおかげでめっちゃ安くなった。すごい。
・どうせ1冊も売れなくて悲しくなって帰るんでしょ……
 →通りすがりっぽい人が結構足を止めてくれた。自分の本を金払って買ってくれる人がいるってあまりにもすごい。


やってよかったこと
一太郎の導入。文章を書くのは慣れていても、本文のレイアウト(2段組)を作るのは初めてだったので。あと本来お高いはずのフォントを使えるのはお得感がある。
・値段設定。釣り銭が絶望的に足りてなかったが、100円玉が増えやすそうな価格に設定したおかげでどうにかなった。これは次回イベントの釣り銭として再利用する。
・コピー本の作成。上記の通り、手に取りやすい価格のコピー本のおかげで足を止めてくれる人が増えたと思う。
・売り子の依頼。どうせ売れないからいらないでしょ、と思っていたけど、売れないからこそ機会損失は減らしたほうがいい。人気作家なら不在にしていてもまた来てくれるだろうけど多分私のところには改めて来たりしない。


やっておくべきだったこと
・長文を書く練習。結果的に2万字しか書けなかったが、本当は予定通り4万字書きたかった。
・表紙デザイン。あまりにも写真素材ドーン!なので今度はちゃんとこだわりたい。
(※追記→2回目も結局写真素材ドーン!にしてしまい、3回目は外注しました。私にデザインは100年早かった……)
・本文サンプルとお品書き。5月のイベントなのに入稿が3月で、今サンプル載せるのは早すぎでしょ……と思いながらいつ上げるべきか分からないままタイミングを見失った。4月末では遅すぎたかも。お品書きは作る予定じゃなかったけどコピー本が出来て新刊2冊になったので慌てて作った。おかげでレイアウトがやっつけすぎて見た目が悪かった。


総括
・本は意外と簡単に作れる!
・イベントは楽しいぞ!!!!!